前回の記事を書いてから2年半も経ってしまった。
これまでここを読んでくれた大半の人が
もうブログは止めたんだろうと思っているでしょうが、
本人はそんな気はないのです。・・でも、いくらなんでもサボりすぎ。
で、年の終わりに当たって、2016年の足跡を
ひとつくらいは残しておこうと、いまこうやって書いている。
今年聞いた歌の中で、何がもっとも心に残っただろうと考えてみたら、
この歌だということになった。
ローラ・ニーロの「
La la means I love you」だ。

彼女の最後のアルバム、「Angel in the dark」(2001年)に収録されている。
アルバムは4年前に買ったが、この曲の素晴らしさには
うかつにも今年になって気付いた。
ローラ・ニーロは、僕が一番好きな女性シンガーだ。
実はもう何年もローラ・ニーロのことを書きたいと思っている。
それができない最大の理由は、レコード・コレクターズ誌1993年11月号の
渡辺亨氏のローラ・ニーロに関する文章を読んだから。
彼女の音楽の本質とその魅力を、これほど見事に描いた文章は他にない。
これ以上のことを書けるわけがない。
それで、この歌のことだけを書く。
「La la means I love you」は、山下達郎がやっているのは知っていたが
調べてみるとデルフォニックスという黒人ソウルグループの1968年の曲だ。
達郎バージョンは、ライブアルバム「JOY」に収録されているが、
デルフォニックスに忠実な解釈で、割と普通の出来。
世間的に、この曲でもっとも認知度が高いのは
多分、
スイング・アウト・シスターのバージョンだ。
アルバム「リヴィング・リターン」(1994年)等に収録されている。
デルフォニックスや達郎バージョンよりも、
この歌の本来持つ美しさを引き出していると思う。
でも、シンプルなアレンジでしっとりと歌い上げた
ローラ・ニーロ・バージョンにはかなわない。

その初期には、生粋のニューヨーカーとして、
ニューヨークの光と影、都市生活者のエネルギーと孤独とを、
痛々しいほどのテンションで歌い上げたローラ・ニーロは、
後期には、母性に満ちた柔らかな愛を歌うようになった。
しかし、最終作となるこのアルバムにおいても
彼女のパッションの深さはまったく変わらない。
・・・・
このアルバム「Angel in the dark」は
カバー曲を歌った1994年のセッションと、
オリジナル曲を歌った1995年のセッションから作られている。
1993年と94年のクリスマスには、ホームグラウンドである
ニューヨークのボトムラインでライブ音源を収録し、
94年には来日公演を果たすなど、彼女の活動はいつになく充実していた。
そんな彼女の卵巣癌が判明したのは95年6月頃のことらしい。
95年8月の最終セッションの頃には、すでに化学療法を
2クール終えていたという。
録音された歌には、まったく病の影は感じられないが、
このアルバムが遺作となることをすでに覚悟していたのかも知れない。
1996年8月、彼女の癌は再発する。
稀代のシンガー・ソングライターではあっても
いわゆるスターではなかった彼女には、
アルバムを発表する十分な資金も信頼できる販路もなかった。
病の床にあったローラ・ニーロは、
プロデューサーで親友だったアイリーン・シルバー・リリーホワイトに
このアルバムの完成と発売を託したという。
1997年4月、ローラ・ニーロは49歳で旅立つ。
リリーホワイトの努力の甲斐あって、
2001年、ついに「Angel in the dark」がリリースされ、続いて
2002年には、前述のボトムラインのライブアルバム「Loom's Desire」も
発表された。

どちらも素晴らしい出来だ。
有終の美と言っていい。
僕は、ローラ・ニーロの訃報を伝える新聞の切り抜きを持っている。
彼女は特別だ。